寝てるわけなんだけど意識ははっきりしていて、闇の中にネグリジェのさとりさんがそっとこちらに手を伸ばすのが見える。
 「あぁ、起きてしまいましたか。……丁度良かったといえばそうなのですけど」なんて言いながら、僕の額に手を伸ばすさとりさん。「動けますか?」なんて聞かれても、寝てるし体を動かせる訳なんてないよ、って言うこともできない。その様子に満足したさとりさん、「もう、遠慮はなしですよ」なんて言いながら、ゆっくりと僕の顔に唇を近づけてくる。口かな、とか思ったら違ったので、ほっぺか額かと待ち構えているけれど、見事に予想を裏切って、僕の右目に触れるようなキスをする。んふぅ、なんて艶めかしい吐息をついて、もう一度キス。今度はねっとりとしていて、瞼を舐めたりまつ毛を舌先で遊んでいる。そして、瞼の裏に舌が差し込まれる。唾液でとろとろになった舌が目に入り込むわけだから当然痛いんだけど、寝てるからかほとんど痛みはなくて。ただただ自身の重要で弱い器官をねぶられているという不快感と、それをしているのがさとりさんだという倒錯感が入り混じって、脳の奥の方までかき回されているようで酷く気持ちが良い。さとりさんの目玉虐めはまだまだ続いて、今度は積極的に目玉を舐め始める。口をすぼめ、吸うようにして角膜を舐める。軽く歯を立てる。……これって結構エライことになってるのかもしれない。ああ、そんなに吸われると……。
 顔を上げたさとりさんは何かを頬張っているようで、しばらく愛おしそうに味わった後、ゆっくりと歯を立てた。ぴちゅっと、あふれ出た液体が僕の頬に掛かった。
 目が覚めるとちゃんと右目も見えて、いつも通りの僕だった。取り立てて言えば枕が血でぐっしょりだったこととか、さとりさんがちょっと申し訳なさそうに「何か変わったことはありませんか」と聞いてきたくらい。どうにも夢だったらしく、少し残念な気持ち。さとりさんのあんな表情を見れるなら、僕の目玉くらいいくらでも食べちゃっていいのにななんて考えてたら、「何馬鹿なこと考えているんですか」って、ちょっと照れたようにさとりさんが笑った。